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読書レビュー 味覚と嗜好のサイエンス

公開日: : 最終更新日:2018/01/11 読書レビュー, 食のコラム , ,

新年、味覚の本をもう1冊。先日紹介した味覚の学校とは違い、こちらは徹底的に科学より。出版されたのは少し古くなるのでご存知の方も居るかもしれませんが・・京大人気講座シリーズということで、京都大学農学研究科食品生物科学で伏木教授が学生に教えている「おいしさの科学」をまとめた本です。

味覚と言うと先日紹介したような感性の関わる分野にもなりますが、「おいしい」という感覚がもつ嗜好性は、私の人生のライフワークでもあります。
私は、人に料理を作る際はその人の食の好みをヒアリングして傾向を把握し、なるべく好みに合う料理を提供するようにしています。
それだけ、おいしいには個人の定義があるのは確か。
そんな、おいしいという定義の難しさを科学的に掘り下げた本。
なぜおいしい料理が人によって違うんだろう、とか、病みつきになる料理ってなんでだろう、ということが気になって眠れないレベルの方はすぐに読むことをおススメします。

味覚と嗜好のサイエンス
伏木亨 著

味覚の受容体と嗅覚の受容体、人の嗜好がもたらすおいしさの定義の違いなどが脳科学面から語られる本です。
さすが京大本・・サイエンスの題名どおり科学の内容がびっしり。マウスを使った実験の結果が記されているような味覚の本です。

「おいしい」という嗜好は人によって全く違うことは私たちフードコーディネーターにも教育されているところではありますが(具体的には割愛しますが、万人にとって美味しいものはこの世には存在しません)、食の嗜好性が恋愛の様式とほとんど同じであること、視床下部に隣り合わせで中枢していることなどは、沢山の人が興味を持ちそうな内容。
ここだけピックアップして恋愛本風に味覚を科学したら売れそうだわとビジネスの香りです・・下世話か・・。

味覚許容量に繋がる、味覚を感じると脳でどういった判断が行われるか、という内容は、フードコーディネーターの皆さんには周知の内容かもしれませんが、その辺の内容や味覚における「やみつき」とは何かの研究など。
おいしさの快感と品位について書かれた項目などは、およそ味覚の本とは思えない面白さです。
ラーメンのコクに含まれる病み付きの要因など、「上品でない」と語られる独自の切り口で味覚について書かれています。
味覚をここまで知りたいと思っている人はあまりいないと思うので若干マニアックな部分はありますし、専門用語も出て来るので誰にでも読みやすい簡単な本ではないかもしれませんが、興味のある方には知識の宝庫のような内容。

例えば、「辛い(からい)」というのは味覚では無く痛み、触覚から来る刺激を指すのに、なぜ日本酒には甘口に対して「辛口」があるのか、ということだったり。
日本酒に含まれる成分で、人間にとってのエネルギーになる糖質やアミノ酸が希薄なお酒を飲むと、身体にとっては栄養源が無いことから味覚としてはドライになる・・「辛口」と呼ぶようになったようですが、なんと辛口のお酒は身体にとってエネルギーが供給されない「辛い(つらい)」お酒なんだそうです。目から鱗。
この理論からすると、辛口のお酒ばかりを飲む人の方が太りにくいことになりますね・・まあ実際はつまみに寄っちゃうので何ともですが。
ここで、著者の伏木さんの目の付け所が面白いのは、辛口のお酒の形容詞にまで及んでいること。辛口のお酒には「厳しい、極辛、淡麗、冷静、孤独、静寂、鬼ころし、男」と語感が厳しさと辛さ(つらさ)、緊張感を持つことが指摘されています。
辛口のお酒は身を削るので、「つらい味わい」と言い切られています。
これは本の中に出てきたひとつの例ですが、味覚というのは、実は身体のメカニズムと関わっていて、美味しさや嗜好の奥深さが面白い。
是非、マニアックに食の嗜好、好みを探りたい方。おススメです。

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